センター紹介パンフレットはこちら

 
パンフレットPDF(2022/12/08更新)

センター設立の目的

ゲーム理論は,人々の利害関係を分析する方法を開発し様々な社会・経済の問題に適用してきました。その積み重ねにより、研究者たちは「与えられた制度=ゲームのルールのもとで人々がどう行動するか」について多くの知見を蓄積してきました。このように,ゲーム理論が現実を説明する「理学」として成熟するに従って,今度はこのアプローチを逆転させて,「人々にとって望ましい結果を得るにはどのような制度=ゲームのルールをデザインすればよいか」という形で,理論による制度設計を現実問題に実装する「工学」的な応用を目指す「マーケットデザイン」と呼ばれる分野が急速に発展しています。夢のまた夢と思われていた社会科学理論の工学的応用がついに実現しつつあり,世界の研究者を魅了する最先端の研究課題となっているのです。 本センターではこうした工学的発想のもと、人材や資源を最適に配分するための具体的で詳細な手続き(プロトコル、アルゴリズム)を設計することを目指します。この研究分野でこれまで特に顕著な成果を得ている基礎理論は,人と人,あるいは人と組織を「適材適所」に結び付ける手法を開発する「マッチング理論」と,周波数帯や空港の発着枠などの貴重な資源をやはり「適材適所」に配分する方法を開発する「オークション理論」です。オークションはお金のやり取りが出来る状況を扱うのに対し,マッチングは法律や倫理的問題などによりお金のやり取りのできないケースを主に扱います。これらの基礎理論を用い、また必要に応じ発展させつつ、実社会への周知や社会実装までおこなう新しいタイプの機関として本センターは誕生しました。  

センターの特徴

以上のような経緯から、本センターは他に類を見ない以下のような特徴を備えます。

関係領域とのコラボレーション

マーケットデザインのキーワードは「適材適所」であり、適材適所の資源配分を行うには実務に耐えうる仕組みを作ることが不可欠です。たとえば実際の応用で具体的に「なにを・誰をどう組み合わせるか」という数学的な問題を現実的な時間内に解く必要があり,これには計算機科学の知見が必須です。このため、本センターでは伝統的な経済学だけではなく計算機科学などの関係領域との学際的なコラボレーションを行い、これらの関係領域との高い次元での真に有機的な融合を実現することをめざします。

工学的な実装

本センターでは理論から得られる知見の社会実装を行います。具体的には,①現場の実態を詳細に調査し,②そこから理論的に重要なポイントを抽出し,③その問題に対する理論的な解を導き、その上で④コンピュータ上でのシミュレーションを実施し,⑤小規模なパイロット的な実装につなげ,⑥フルスケールの本格的な実装までを行うことを目指します。また,一定の汎用性があり,ユーザーが必要に応じてカスタマイズ可能なソフトウェアを開発し,Webサービスなどとして提供します。

革新的な基礎理論の構築

本センターでは,実装から理論的発展へのフィードバックを行います。具体的には,実装の作業を通じて,これまでの研究では光が当たっていなかった問題(現場からの要請)を把握し,それを解決する理論を新たに作り出すことを目指します。このように、既存の研究を実社会に適用するだけでなく理論そのものを発展させることで、本センターの研究機関としての使命を果たしていきます。 本センターでは以下の5つの領域を重点的に扱っています。