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ERATO小島マーケットデザインプロジェクト・キックオフシンポジウム 当日の模様のご紹介
ERATO小島マーケットデザインプロジェクト・キックオフシンポジウム「マーケットデザインで制度を科学的に設計する社会へ 社会実装へのお誘い」が9/2(於東京大学/オンライン)に開催されました。
本シンポジウムでは、ERATO小島マーケットデザインプロジェクトの活動内容、マーケットデザインの開拓者でノーベル経済学賞受賞者のAlvin Roth教授へのインタビューやマーケットデザインの日本における先導的な事例が紹介されました。
「あらゆる制度を科学的に設計する社会」の実現を目指す
小島武仁教授(東京大学)の「プロジェクト紹介」では、制度設計の科学であるマーケットデザインの特徴は、望ましい配分から最適な制度を逆算し、新制度の創出や社会課題の解決をめざす点であるとして、マーケットデザインで設計され既に実用化され成果を挙げている事例を紹介しました。
そのうえで、汎用性の高い一般理論が確立されていないこと、効果予測・事後的測定が不十分であること等を背景に、実社会の制度を改善できた例はそのポテンシャルに比べまだ限られているとして、本プロジェクトは、これらの課題を解決するため、世界的な研究者を結集した5つの研究グループが連携し、理論研究、事前・事後検証、最適な制度の社会実装等を推進し「あらゆる制度を科学的に設計する社会」の実現に取り組みたいと話しました。
市場に関わる人々と話して様々な市場の問題と解決可能性を見極める
Alvin Roth教授(スタンフォード大学)の「マーケットデザインの実践」(小島武仁教授によるインタビュー)では、Roth教授等が開拓してきた、米国の研修医の病院配属、学校選択、腎移植に関する制度設計の実践について、Roth教授が取り組んだ課題・研究や、人々の暮らしや社会へのインパクト等も含めて、紹介して頂きました。
また、マーケットデザインの実践の最前線の事例として、難民・移民の再定住マッチングの取り組みについて、説明して頂きました。マーケットデザインの社会実装に関心のある方々に向けては、市場に関わる人々と話して様々な市場の問題と解決可能性を見極めることの重要性を強調し、経済学者は、制度設計の優れたツールであるゲーム理論等を活用して、市場の問題を関係者と協力して解決していくことが大いに期待できると話しました。
企業・省庁・自治体等の皆様とマーケットデザインの社会実装を
野田俊也講師(東京大学)の「マーケットデザインの社会実装へのお誘い」では、理論研究の知見を社会実装し、実社会の問題を解決し、そこで得られた知見を理論研究に還元するという理論研究と社会実装のサイクルを推進する重要性を強調し、一例として、DA(deferred acceptance)アルゴリズムによる安定マッチングとそれがどのように実社会(研修医マッチングや学校選択制)で応用されてきたかを紹介しました。
そして、企業・省庁・自治体等の方々に、マーケットデザインの社会実装・研究等へのご協力を呼びかけるとともに、共同研究・受託研究の流れを紹介しました。
マーケットデザインの社会実装事例を企業目線でご紹介
シンポジウム後半では、
- 新入社員の配属決定にマッチング理論を活用している、シスメックス株式会社の奥山健雄様
- マーケットデザインの知見を活用した待機児童削減に取り組む、株式会社サイバーエージェントの森脇大輔様
- オークション理論を活用したマルチユニット・ハイブリッドオークションを運用している、株式会社オークネットの一井克彦様
にご登壇いただき、企業目線でどのようにマーケットデザインの知見が活用されているかをご説明いただきました。
▶実装プロジェクトにご関心のある方はこちら:
https://www.jst.go.jp/erato/kojima/news/2024/240806.html
*ERATOは国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)によるプログラムです。